株式投資の損失を節税に活かす方法|損益通算と繰越控除の手順と実例を解説

株式投資の損失を節税に活かすイメージを描いたイラスト。グラフの下落に悩む男性、電卓や「TAX」と書かれた書類、円マークのコイン、上昇矢印が配置され、損失を節税に変える流れを表現。
目次

株式投資で損をしても「節税のチャンス」がある

株式投資をしていると、利益が出る年もあれば損失が出る年もあります。
一見「損をした=終わり」と思われがちですが、実は損失も節税に活かすことができるのです。
投資でマイナスになったとしても、確定申告を通じて所得税や住民税の負担を軽減できる方法があります。

その代表的な仕組みが「損益通算」と「繰越控除」。
これらをうまく使うことで、翌年以降の税負担を減らしたり、払いすぎた税金を還付してもらうことが可能になります。

この記事では、株式投資の損失を節税に活かすための具体的なステップを、実例付きでわかりやすく解説します。


投資で損をしても確定申告をすべき理由

株式投資で利益(譲渡益)が出た場合には税金が自動的に源泉徴収されますが、
損失が出た場合には自分で確定申告を行わないと節税効果を得られません。

なぜなら、損失をそのままにしておくと「損益通算」や「損失の繰越控除」といった制度が使えないからです。
特に特定口座(源泉徴収あり)で運用している方は、取引ごとに自動で税金が計算・納付されるため、
損をしても税務上は何も処理されない状態になります。

しかし、確定申告を行えば、他の取引や翌年以降の利益と損失を相殺(そうさい)でき、
実際の投資結果に見合った税負担に調整することが可能です。


損失を節税に活かすために知っておくべき3つの基本制度

1. 損益通算(同じ種類の利益と損失を相殺)

損益通算とは、同じ区分の所得(株式や投資信託などの譲渡所得)内で利益と損失を相殺する制度です。
たとえば、以下のようなケースです。

年間取引結果損益通算後
A社株で +50万円の利益+50万円
B社株で -30万円の損失-30万円
合計+20万円が課税対象

このように、損益通算を行うことで、課税対象となる利益を減らし、税金を節約できます。

2. 損失の繰越控除(3年間の節税チャンス)

損益通算をしてもなお損失が残った場合、その損失は翌年以降3年間にわたって繰り越せます。
つまり、「今年損した分を、来年以降の利益と相殺できる」という仕組みです。

年度収支損失繰越後の課税対象
1年目-60万円-60万円(繰越)
2年目+40万円-20万円(さらに繰越)
3年目+30万円10万円に対して課税

このように、3年間にわたって損失を節税に活かすことができるのが大きな特徴です。

3. 所得控除との違いを理解しておく

損益通算や繰越控除は「所得控除」ではなく、「所得金額そのものを減らす」仕組みです。
医療費控除や生命保険料控除と違い、課税対象の所得を直接減らすため節税効果が高いというメリットがあります。


株式投資で損失を節税に活かすステップ

ここからは、実際に損失を節税に活かすための流れを、具体的な手順で紹介します。


ステップ1:年間取引報告書を確認する

証券会社から発行される「年間取引報告書」は、節税手続きの出発点です。
この書類には、1年間の取引結果(利益・損失・配当など)がまとめられています。

特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合、通常は確定申告不要ですが、
損失を繰り越したい場合にはこの報告書を添付して申告
する必要があります。

年間取引報告書で確認するポイント:

  • 株式の譲渡損益
  • 配当金の受取額
  • 源泉徴収税額

ステップ2:確定申告書B+申告書第三表を作成する

損益通算や繰越控除を行うためには、確定申告書Bおよび「申告書第三表(分離課税用)」が必要です。
国税庁のe-Taxサイトや確定申告書作成コーナーを利用すれば、入力に従って自動計算してくれます。

主な入力項目:

  • 株式等の譲渡損失・譲渡益の金額
  • 源泉徴収税額
  • 繰越控除の適用の有無

電子申告を行う場合は、マイナンバーカードとICカードリーダー(またはスマホ認証)が必要です。


ステップ3:損失の繰越控除を申告する(初年度のみ必須)

繰越控除を使いたい場合、最初の年(損失が出た年)に申告しないと翌年以降に繰り越せません。

これを忘れてしまうと、せっかくの損失が「税務上なかったこと」になってしまうため要注意です。

また、繰越控除を適用する場合は、翌年・翌々年も引き続き確定申告が必要になります。
毎年自動で繰り越されるわけではないので、3年間連続で申告することを忘れないようにしましょう。


ステップ4:源泉徴収あり口座となし口座の損益通算

もし、複数の証券口座を利用している場合、源泉徴収あり口座となし口座の損益通算も可能です。

たとえば、

  • A証券(源泉徴収あり)で+50万円の利益
  • B証券(源泉徴収なし)で-30万円の損失

この場合、確定申告を行えば両方を合算して+20万円とみなされ、
本来よりも少ない税金で済む可能性があります。


ステップ5:配当所得との通算も検討する

株式の配当金は「配当所得」として扱われますが、申告分離課税を選択すれば損失と通算が可能です。

配当金は通常、源泉徴収(20.315%)で課税されますが、確定申告を行い損失と相殺することで、
税金が戻ってくるケースもあります。

区分通常課税損益通算あり
配当金税率20.315%で課税損失分で相殺でき、税金還付の可能性

実例で理解する!損失を節税に活かすシミュレーション

損益通算や繰越控除の仕組みは少し抽象的に感じられるかもしれません。
ここでは、実際の数値を使って「どれだけ節税できるのか」をシミュレーションしてみましょう。


ケース①:同一年内での損益通算

Aさんの投資状況:

  • A社株式の売却益:+80万円
  • B社株式の損失:−50万円
  • 配当金:+10万円(申告分離課税を選択)

通算前

  • 利益合計:90万円
  • 税率:20.315%
    約18.2万円の税金

通算後(損益通算を適用)

  • 80万円 − 50万円 + 10万円 = 40万円
  • 税率:20.315%
    約8.1万円の税金

つまり、損益通算によって約10万円の節税ができたことになります。


ケース②:繰越控除で翌年以降に節税

Bさんの投資状況:

  • 1年目:−60万円の損失
  • 2年目:+30万円の利益
  • 3年目:+50万円の利益

1年目に損失の繰越申告をしておけば、以下のように節税効果を享受できます。

年度利益/損失繰越残額課税対象節税額(目安)
1年目−60万円60万円繰越なし
2年目+30万円30万円繰越なし約6万円
3年目+50万円0円(繰越完了)20万円課税約6万円

→ 結果的に、3年間で約12万円の税金を節約
これが、損失の繰越控除を活用する最大のメリットです。


よくある間違いと損をしないための注意点

せっかく損失を出しても、手続きのミスで節税のチャンスを逃す人は少なくありません。
次の3つは特に注意すべきポイントです。


1. 「源泉徴収あり」口座に安心して放置してしまう

特定口座(源泉徴収あり)は便利ですが、「自動で申告が完結する」と思い込み、
損失を確定申告に反映しないケースが多いです。

→ 対策:損失が出た年は、必ず確定申告で繰越申請を行うこと。


2. 繰越控除を途中でやめてしまう

繰越控除を使うには、3年連続で確定申告が必要です。
2年目や3年目に申告を忘れると、残りの損失は消滅してしまいます。

→ 対策:確定申告の時期(毎年2月中旬〜3月中旬)をカレンダーに登録しておくと安心。


3. 損益通算できない投資商品を混同する

損益通算ができるのは「上場株式・投資信託など同じ分離課税区分」のみ。
次のような所得とは通算できません。

通算できない所得
総合課税の所得給与所得、事業所得など
不動産所得賃貸収入
雑所得FXの一部、仮想通貨取引 など

→ 対策:株や投資信託の損失は同じ種類の金融商品で相殺するのが原則。


損失を節税に活かす「ベストプラクティス」

損益通算・繰越控除をより効果的に活かすための実践ポイントをまとめます。

💡ポイント①:年末の「利益調整売り」を活用する

年末に含み損のある銘柄を一度売却することで、損失を確定させ、
他の利益と相殺する「損出し(そんだし)」というテクニックがあります。

再び同じ銘柄を買い戻せば、保有ポジションを維持しつつ節税効果を得ることが可能です。
ただし、同一銘柄を30日以内に買い戻すと税務上の認定に注意が必要です。


💡ポイント②:配当金の課税方式を選ぶ

配当金は「申告不要」「総合課税」「申告分離課税」から選択できます。
損失と通算したい場合は、申告分離課税を選ぶ必要があります。

→ 証券会社の「年間取引報告書」にある「配当等の額」を確認しておきましょう。


💡ポイント③:複数口座の損益をまとめて申告

複数の証券会社を利用している場合、
それぞれの口座で発生した損益をまとめて確定申告することが可能です。

A証券で+10万円、B証券で−15万円なら、
損益通算によって全体で−5万円の損失として翌年に繰り越せます。


損失の申告で得られる「還付金」の可能性

損益通算を行うと、**すでに源泉徴収された税金の一部が戻ってくる(還付)**ケースもあります。

例えば、A証券で利益+100万円(税引20万円)
B証券で損失−80万円が出ていた場合、確定申告で損益通算をすると:

→ 実質課税対象は+20万円のみとなり、
支払い済みの税金(約16万円分)が還付金として戻るのです。

つまり、「確定申告=お金が戻ってくるチャンス」でもあります。


投資家が今すぐできる行動ステップ

損失を節税に活かすには、「正しく知って、早く行動する」ことがカギです。
次の3ステップで整理しておきましょう。

ステップ1:年間損益を早めに確認する

12月に入ったら、証券会社の「年間損益」ページをチェック。
利益・損失のバランスを見ながら、年内に損出しを行うか判断しましょう。

ステップ2:損失が出たら必ず確定申告

源泉徴収あり口座でも、損失を繰り越したい場合は確定申告が必須です。
確定申告の際は「年間取引報告書」を添付するのを忘れずに。

ステップ3:翌年以降も申告を継続

繰越控除を活用するなら、3年間連続で申告。
スプレッドシートなどで「損失残高」を管理しておくとミスを防げます。


税金を理解してこそ“本当の投資上手”

株式投資は「儲けること」だけでなく、「損をどう扱うか」も重要です。
税金の知識を持つことで、マイナスを次のチャンスに変える力が身につきます。

損益通算や繰越控除は、投資家のリスクを減らし、長期運用を支える重要な制度です。
一度手続きを覚えてしまえば、今後もずっと使える“節税スキル”になります。

投資の世界では、
「利益を上げる人」よりも、「損を最小化する人」が最後に資産を残します。

確定申告を通じて、自分の損失を正しく処理し、
税金を味方につけた投資家を目指しましょう。

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