投資を始めたら「税務署」も無関係ではない
株式投資やNISAを始めると、「確定申告」や「税金」の話題を耳にすることが増えます。
しかし、投資初心者の中には「自分には関係ない」と思っている人も多いのではないでしょうか。
実際のところ、税務署からの問い合わせや確認連絡は誰にでも起こり得ることです。
投資で得た利益を正しく申告していなかったり、誤った申告をしていた場合、税務署が後から確認を求めてくるケースがあります。
特に、ネット証券の利用や複数口座での取引が一般的になった現在では、税務署側も電子的に投資情報を把握できるようになっており、
「自分の取引はバレないだろう」という考えは通用しません。
この記事では、投資初心者が知っておくべき税務署からの問い合わせ内容・理由・対応方法を、わかりやすく整理して解説します。
なぜ税務署から問い合わせが来るのか?
投資に関して税務署から連絡がある場合、そのほとんどが「所得の申告内容に不明点がある」ためです。
悪意のある脱税を疑われるケースはごく一部で、単なる誤りや勘違いが原因のことがほとんどです。
主な問い合わせ理由
| 理由 | 内容の概要 |
|---|---|
| 申告漏れ | 株の売却益・配当などを申告していない |
| 重複申告 | 複数の口座で二重計上している |
| 損益通算の誤り | 損失と利益の計算が正しくない |
| 名義の混在 | 家族名義での取引をまとめて申告している |
| 扶養の影響 | 扶養家族の所得として疑義が生じている |
たとえば、「源泉徴収あり口座」なのに確定申告で同じ利益を再申告していたり、
「源泉徴収なし口座」の利益を申告し忘れていたりすると、税務署のデータ照合で違いが見つかります。
税務署はどのように投資情報を把握しているのか
「どうして税務署にバレるの?」と疑問に思う方も多いでしょう。
実は、税務署は証券会社からの取引データ報告を通じて、あなたの取引情報を自動的に把握しています。
情報連携の仕組み
- 証券会社は毎年、「年間取引報告書」や「特定口座年間取引データ」を税務署へ送信
- 投資家本人が確定申告で提出した内容と、自動報告データをマイナンバーで照合
- 不一致や未申告が見つかると、自動的に「確認対象」としてリストアップ
つまり、税務署は「あなたがどの証券会社で、どのくらいの利益・配当を得ているか」をすでに把握しています。
そのため、「申告しなくても大丈夫だろう」は通用しません。
問い合わせの種類と連絡の流れ
税務署からの問い合わせにはいくつかのパターンがあります。
連絡が来たからといって慌てる必要はありません。まずは内容を冷静に確認しましょう。
① 書面での問い合わせ(文書照会)
最も一般的なケースが「文書照会書」や「お尋ね書き」が届くパターンです。
これは、**「申告内容を確認したい」「取引内容に不一致がある」**という連絡であり、いきなり税務調査が入るわけではありません。
📄 書面の特徴
- 封筒の差出人:〇〇税務署 署名付き
- タイトル例:「株式等の譲渡所得に関するお尋ね」
- 提出期限:概ね2〜3週間以内
- 要求内容:年間取引報告書・取引明細・所得計算書などの提出
この段階で誠実に対応すれば、ほとんどのケースは書面で解決します。
② 電話での確認
書面送付前に、軽い確認として電話がかかってくることもあります。
「申告書の記載と実際のデータが少し違うようなのですが…」といった確認レベルの連絡が多いです。
対応のポイント:
- メモを取りながら内容を正確に記録する
- 曖昧な点がある場合は「後日確認して折り返します」と伝える
- その場で焦って答えず、証券会社や税理士に確認してから返答する
電話はあくまで事実確認のための会話であり、緊急性の高いものではありません。
③ 税務調査(まれなケース)
書面や電話の段階で誤りが修正されず、明確な申告漏れが疑われる場合にのみ、
「任意調査」または「強制調査(脱税容疑)」が行われます。
ただし、これはごく一部のケースであり、
一般的な投資初心者が対象になることはほとんどありません。
税務署も「意図的な不正」より「間違いの訂正」を重視しており、誠実に対応すれば問題ありません。
税務署の問い合わせを受けたときの心構え
税務署から連絡が来ると、多くの人が「自分が何か悪いことをしたのでは」と不安になります。
しかし、焦って行動するとかえって誤解を招くこともあります。
問い合わせがあった場合は、次の3つのポイントを意識してください。
1. 連絡内容を正確に把握する
まずは封書やメール、電話の内容を落ち着いて確認しましょう。
「何についての問い合わせなのか(株の売却益・配当・損益通算など)」を特定することが大切です。
2. 関係書類を整理する
証券会社が発行する以下の資料を手元に用意しておくとスムーズです。
- 年間取引報告書
- 特定口座年間取引明細書
- 取引履歴(売買履歴)
- 確定申告書の控え
これらがあれば、税務署側の指摘内容を自分でも検証できます。
3. すぐに税理士・証券会社に相談する
自分で判断できない場合は、税理士や証券会社のサポート窓口に相談しましょう。
税務署の指摘内容に対して、どう説明すればよいかをアドバイスしてもらえます。
とくに金額が大きい場合や、複数年にまたがる場合は、専門家の意見を必ず仰ぐことが重要です。
よくある問い合わせ内容とその対応例
ここからは、実際によくある問い合わせ事例をもとに、具体的な対応ポイントを解説します。
ケース①:源泉徴収あり口座となし口座の混在
投資初心者に最も多いのが、源泉徴収の有無を混同したまま確定申告してしまうケースです。
よくある状況
- 源泉徴収あり口座 → 税金は自動で納付済み
- 源泉徴収なし口座 → 自分で確定申告が必要
これを区別せずに「全ての口座を申告不要」としてしまうと、未申告扱いになり、税務署から照会が来ます。
対応方法
- 各証券会社の口座区分を確認
- 「源泉徴収なし口座」での利益を申告漏れしていた場合は、速やかに修正申告
修正申告は税務署窓口またはe-Taxで簡単にできます。
延滞税がかかることもありますが、早期対応で最小限に抑えられます。
ケース②:配当金を二重で申告してしまった場合
株式の配当金は、源泉徴収済みで自動的に課税されていることが多く、確定申告をしなくても問題ありません。
しかし、確定申告時に再度申告してしまうと「二重課税」となり、税務署から確認の連絡が入るケースがあります。
よくある間違い
- 年間取引報告書の内容をそのまま入力し、すでに課税済みの配当を再申告
- 配当控除を目的に総合課税で申告したが、住民税申告の区分を誤った
対応方法
- 配当金がどの口座で、どの課税方式を選択しているかを確認
- 二重申告していた場合は、**更正の請求(税金の還付手続き)**を行う
更正の請求は、申告した翌日から5年以内であれば可能です。
税務署に相談すれば手順を案内してもらえるので、誠実に説明すればトラブルにはなりません。
ケース③:損益通算・繰越控除の誤り
株式投資では、複数の証券口座で取引していると損益通算の誤りが発生しやすくなります。
特に、「A社で利益」「B社で損失」が出ている場合に、どちらか一方しか申告していないケースです。
よくある問い合わせ内容
「B証券で損失があるようですが、確定申告書に記載がありません。意図的でしょうか?」
このような場合、税務署は「損失を意図的に省略したか」「単純な記入漏れか」を確認します。
対応方法
- 各証券会社の年間取引報告書をまとめて見直す
- 未記載の損失がある場合は、修正申告または更正の請求で訂正
損失を繰り越して翌年に控除を受ける場合は、毎年継続して申告しないと無効になります。
申告を1年でもサボると、過去の繰越控除が全てリセットされる点に注意しましょう。
税務署からの連絡を無視するとどうなる?
「ちょっと面倒だから放っておこう」と思うのは危険です。
税務署からの問い合わせを無視すると、次のようなリスクがあります。
① 修正申告を求められる
期限内に回答しなかった場合、税務署が申告内容を再計算し、「修正申告のお願い」という形で通知を出します。
この時点ではまだ「任意」の対応ですが、放置すれば次の段階に進みます。
② 追徴課税・延滞税が発生する
税務署が「申告漏れ」と判断した場合、追徴課税(過少申告加算税)や延滞税が課されます。
| 税の種類 | 内容 | 税率 |
|---|---|---|
| 過少申告加算税 | 修正申告を求められた場合 | 原則10% |
| 無申告加算税 | 申告期限までに提出しなかった場合 | 原則15% |
| 延滞税 | 納付が遅れた場合 | 年7.3%以下(変動) |
金額が小さい場合は軽減されますが、放置すれば負担が増える一方です。
③ 税務調査に発展する可能性
意図的に無視を続けると、税務署が「悪質な申告漏れ」と判断し、正式な調査に発展することがあります。
この場合、調査官が直接自宅や職場を訪問するケースもあります。
もっとも、誠実に対応していればこうした事態には発展しません。
早期対応と誠実な説明が何よりの防御策です。
問い合わせを受けたときにやってはいけないこと
税務署から連絡を受けた際、初心者がやりがちな「NG対応」を知っておきましょう。
❌ その場しのぎの回答をする
税務署は会話を記録しているため、その場で誤った情報を伝えると後で訂正が難しくなります。
不明点は「確認してからご連絡します」と答えるのが正解です。
❌ 取引記録を削除・改ざんする
税務署は証券会社のデータを直接参照できます。
取引履歴を消したり隠したりしても意味がなく、むしろ悪質と判断される恐れがあります。
❌ 無視して放置する
封書や電話を放置しても、記録上「未回答」として残ります。
最終的に税務調査や加算税につながるリスクがあるため、必ず返信または相談しましょう。
事前にできる「問い合わせ予防策」
税務署からの問い合わせは、日頃の管理をしっかり行うことで防ぐことができます。
以下のポイントを意識すれば、税務署とのトラブルはほぼゼロに抑えられます。
① 年間取引報告書を毎年確認
証券会社から送られる「年間取引報告書」をもとに、
- 利益・損失
- 源泉徴収の有無
- 配当金の受取方法
を必ず確認しましょう。
これを元に確定申告を行えば、申告漏れや誤りは起こりません。
② 口座区分を明確にする
「特定口座(源泉徴収あり)」と「一般口座」「NISA口座」が混在していると、課税方法を間違えやすくなります。
自分がどの口座でどの取引を行っているか、毎年整理しておきましょう。
③ e-Taxで申告データを保管
e-Taxを利用すれば、過去の申告内容や添付書類を電子データとして保存できます。
税務署から照会が来ても、提出履歴をすぐ提示できるのが大きなメリットです。
投資初心者が頼れるサポート先
税務署からの連絡に不安を感じたときは、専門家や相談窓口を利用しましょう。
税務署の相談窓口
全国の税務署には「個人課税部門」に無料の税務相談コーナーがあります。
書面の書き方や修正申告のやり方も丁寧に教えてもらえます。
税理士に相談する
- 取引額が多い
- 過去の申告ミスが心配
- 複数口座で取引している
といった場合は、税理士に相談するのが確実です。
書類の提出から修正申告の手続きまで代行してもらえるため、ストレスを大幅に減らせます。
まとめ|誠実な対応が信頼につながる
税務署からの問い合わせは、決して特別なことではありません。
多くの場合は単なる確認であり、誠実に対応すればすぐに解決します。
重要なのは、
- 問い合わせを無視せず、期限内に返信する
- 証券会社や税理士と連携して正確に対応する
- 日常的に取引記録を整理しておく
この3点を心がけることです。
投資を継続する上で、税金の理解と税務署対応の知識は欠かせません。
正しい知識を持っていれば、万一連絡が来ても慌てることなく、「信頼される投資家」としての対応ができます。

