株価の勢いを数値で“見える化”するRSIとは
株式投資をしていると、「そろそろ買い時かな？」「もう売った方がいいのかな？」と悩む瞬間が多くあります。
そんな時に役立つのが、テクニカル指標の一つである**RSI（Relative Strength Index／相対力指数）**です。
RSIは、株価の「上昇」と「下落」のバランスを数値化して、
今の相場が買われすぎなのか・売られすぎなのかを判断するためのツールです。
多くの投資家がRSIを参考にして売買タイミングを決めており、
初心者でも比較的使いやすい指標として人気があります。
この記事では、RSIの基本の考え方から、実践的な使い方、注意点、他の指標との組み合わせ方まで、
わかりやすく丁寧に解説します。
投資で起こりやすい「感情的な売買」を防ぐには
初心者のうちは、「上がりそうだから買う」「下がって不安だから売る」といった
感情的な判断に左右されがちです。
しかし相場の世界では、「人の感情」が価格を大きく動かします。
過熱感が高まりすぎれば買われすぎになり、悲観が広がれば売られすぎになる。
その結果、反転のチャンスを逃したり、損切りが遅れたりすることも少なくありません。
RSIは、こうした感情的な動きを「数値」として見える化することで、
客観的な判断をサポートしてくれます。
つまりRSIとは、**投資家心理を数値化した“温度計”**のような存在なのです。
RSIの基本構造と計算の仕組み
RSIは、過去一定期間における株価の上昇幅と下落幅を比較して算出されます。
具体的な計算式は次の通りです。 RSI=上昇幅の平均上昇幅の平均+下落幅の平均×100RSI = \frac{上昇幅の平均}{上昇幅の平均 + 下落幅の平均} × 100RSI=上昇幅の平均+下落幅の平均上昇幅の平均×100
一般的には14日間のデータをもとに計算することが多く、結果は0〜100%の数値で表示されます。
- 値が高いほど「買われすぎ」
- 値が低いほど「売られすぎ」
を意味します。
RSIの基本的な見方
| RSIの数値 | 状況 | 判断目安 |
|---|---|---|
| 70%以上 | 買われすぎ | 反落の可能性あり（売り検討） |
| 30%以下 | 売られすぎ | 反発の可能性あり（買い検討） |
| 50%前後 | 中立 | トレンド転換を待つ局面 |
このようにRSIを使えば、相場が過熱しているのか、落ち着いているのかを一目で把握できます。
RSIの「買われすぎ」「売られすぎ」はなぜ起こる？
株価は常に上がり続けるわけでも、下がり続けるわけでもありません。
しかし投資家の心理が偏ると、一方向に動きすぎることがあります。
これが「買われすぎ」「売られすぎ」の状態です。
買われすぎの典型パターン
- 好材料（決算・ニュースなど）が出て買いが集中
- 株価が急上昇し、RSIが70を超える
- 投資家の期待が高まりすぎ、やがて利確売りが発生 → 反落
売られすぎの典型パターン
- 悪材料が出て投げ売りが増加
- 株価が急落し、RSIが30を下回る
- 恐怖心理がピークに達した後、買い戻しで反発
つまりRSIは、投資家の群集心理が極端に傾いた状態を知らせる警報機のようなものです。
RSIの期間設定による違い
RSIは計算期間を変更することで、反応の速さが変わります。
| 設定期間 | 特徴 | 適した投資スタイル |
|---|---|---|
| 9日 | 反応が早く短期トレード向き | デイトレード・スイング |
| 14日（標準） | バランス型。多くの投資家が利用 | 一般的なスイング・中期 |
| 25日 | 反応が遅く、長期トレンドを把握しやすい | 中長期投資 |
短期RSIは小さな値動きも捉えやすい反面、ダマシが多くなります。
一方、長期RSIは信頼性が高いものの、反応が遅れる傾向があります。
そのため、複数期間を併用して分析するのが効果的です。
RSIの形でわかるトレンド転換のサイン
RSIは単なる数値だけでなく、その「動き方」からもトレンドの変化を読み取れます。
1. ダイバージェンス（逆行現象）
株価が上昇しているのにRSIが下がる、またはその逆が起きる現象。
これは、トレンド転換の前触れとされます。
| 状況 | 意味 |
|---|---|
| 株価が高値更新・RSIが下降 | 上昇の勢いが弱まり、下落転換の可能性 |
| 株価が安値更新・RSIが上昇 | 下落が弱まり、反発の可能性 |
このパターンは多くの投資家が注目する“警戒シグナル”です。
2. RSIのサポート・レジスタンス
RSIも株価と同様に、一定の水準で跳ね返る特徴があります。
過去に反発したRSIレベル（例：30〜35付近）で再び反発すれば、買いタイミングの参考になります。
3. トレンドラインを引く
RSIチャートにもトレンドラインを引くことで、勢いの変化を早めに察知できます。
RSIの上昇ラインを下抜けた場合は勢いの鈍化を示し、早めの利確判断に役立ちます。
RSIと移動平均線の違い・使い分け方
初心者の中には「RSIと移動平均線、どっちを使えばいいの？」と疑問に思う方もいるでしょう。
両者の違いを整理すると次のようになります。
| 指標 | 主な特徴 | 向いている用途 |
|---|---|---|
| RSI | 株価の勢い（モメンタム）を数値化 | 過熱感や反転の目安に使う |
| 移動平均線 | 一定期間の平均価格を線で表示 | トレンドの方向や強さを把握 |
RSIは“スピード”、移動平均線は“方向”を見るためのツールです。
両方を組み合わせることで、より精度の高い分析が可能になります。
RSIを使った実践的な売買戦略
RSIを実際の投資判断に活かすには、「数値の動き」と「タイミング」を正しく読み取ることが大切です。
ここでは、初心者にも取り入れやすい3つの基本戦略を紹介します。
1. シンプルRSI戦略（単独活用）
最も基本的な方法は、RSIの数値のみを使って「買い」「売り」を判断するシンプルな戦略です。
- RSIが30以下になったら買い検討（売られすぎ）
- RSIが70以上になったら売り検討（買われすぎ）
この方法は直感的でわかりやすく、初心者でもすぐに実践できます。
ただし、レンジ相場（横ばいの状態）では機能しやすい一方で、
強い上昇や下落トレンドの中では「逆張り」になりやすい点に注意が必要です。
2. トレンド順張りRSI戦略（フィルタ付き）
RSIを単独で見るのではなく、「トレンドを確認してから」使うのが中級者向けの方法です。
たとえば次のように組み合わせます：
| 条件 | 売買アクション |
|---|---|
| 移動平均線が上向き（上昇トレンド）＋RSIが40付近で反発 | 買い（押し目買い） |
| 移動平均線が下向き（下降トレンド）＋RSIが60付近で反落 | 売り（戻り売り） |
このように「トレンドの方向を確認してからRSIを見る」と、
誤った逆張りを避けられ、成功率が高まります。
3. ダイバージェンス戦略（トレンド転換の察知）
RSIの中でも特に信頼性が高いのが「ダイバージェンス（逆行現象）」を使った戦略です。
- 株価が高値を更新しているのにRSIが下降 → 上昇の勢いが弱まりつつある（売りサイン）
- 株価が安値を更新しているのにRSIが上昇 → 下落の勢いが弱まりつつある（買いサイン）
このパターンは、トレンド転換の初動を捉えることができるため、
上級者もよく活用しています。
RSIと他のテクニカル指標を組み合わせる
RSIは単体でも便利ですが、他の指標と組み合わせることで精度が格段に向上します。
ここでは代表的な3つの組み合わせ方を紹介します。
1. RSI × 移動平均線
- RSIで勢いを確認し、移動平均線でトレンド方向を確認
例：25日線が上向きのとき、RSIが40以下で反発 → 買いサイン。
→ トレンド順張り＋押し目狙いに最適。
2. RSI × MACD
MACD（マックディー）は、トレンド転換を捉える指標です。
RSIが30以下（売られすぎ）で、同時にMACDが上向きクロスすれば、反発の信頼度が高まります。
逆に、RSIが70以上かつMACDが下向き転換した場合は、反落サインとして警戒。
3. RSI × ボリンジャーバンド
RSIが高水準（70超）で、株価がボリンジャーバンドの上限を突破している場合、過熱感が強いと判断できます。
一方、RSIが低水準（30以下）で下限タッチした場合は、短期反発が期待できるパターンです。
このように、「RSI × 他指標」でダブルチェックすることで、ダマシを大幅に減らすことが可能です。
RSIを使う上での注意点と落とし穴
RSIは便利なツールですが、誤用すると損失を招くリスクがあります。
初心者がつまずきやすいポイントを整理しておきましょう。
1. トレンドが強いときは逆張りが危険
上昇トレンドではRSIが70を超えても下がらないことがあります。
このような場合に「売り」と判断すると、上昇の波に逆らう形になり、損をする可能性が高いです。
💡ポイント：
- 上昇トレンド中はRSIの基準を「80／40」に変更
- 下降トレンド中は「60／20」に変更
こうすることで、トレンドに沿った判断ができます。
2. RSIだけで判断しない
RSIは「勢い」を表す指標であり、「方向性」はわかりません。
そのため、トレンドを示す移動平均線やチャートパターンなどと併用するのが原則です。
3. 数値だけを信じすぎない
RSIは過去のデータに基づくため、「将来の値動きを保証するものではない」点を忘れてはいけません。
あくまで確率的な判断材料として使うのが正しい姿勢です。
実際のチャート分析例（イメージ）
ここでは、RSIを使った典型的な分析例をテキストでイメージしてみましょう。
例①：買いのタイミング
RSI：28％ → 売られすぎ
株価：前回安値付近で下げ止まり
移動平均線：25日線は横ばい
出来高：やや減少傾向
→ 過去の反発ポイントと一致。短期反発の可能性が高く、少量の買いエントリーを検討。
例②：売りのタイミング
RSI：75％ → 買われすぎ
株価：前回高値に接近
MACD：シグナルを下抜け
→ 過熱感が高く、短期的な調整を警戒。保有株の一部を利確。
このように、RSIをチャートや出来高とあわせて見ることで、精度の高い判断が可能になります。
初心者がRSIを学ぶステップ
RSIは数値でシンプルに見える反面、「どの状況で有効か」を理解するには経験が必要です。
以下のステップで少しずつ慣れていくのがポイントです。
ステップ1：RSIをチャートに表示する
証券会社のツール（SBI証券、楽天証券、TradingViewなど）でRSIを設定します。
期間はまず14日を基本に。
ステップ2：過去の反発点を探す
チャートをスクロールして、RSIが30以下になったとき株価がどう動いたかを確認。
反発の傾向を掴むことで、「この銘柄のRSI基準」が見えてきます。
ステップ3：他の指標と組み合わせて検証
移動平均線やMACDと組み合わせて、過去のサインがどれくらい有効だったかをチェック。
Excelなどに記録しておくと、自分だけの売買ルールが作れます。
ステップ4：少額で実践してみる
最初から大きな金額を動かすのではなく、まずは少額で試してみましょう。
RSIが機能する局面・しない局面の違いを実感できます。
今日から実践できるRSI活用のチェックリスト
| チェック項目 | 内容 |
|---|---|
| RSIが30以下／70以上のときに注目しているか | 感情ではなく数値で判断する |
| 出来高やトレンドも同時に確認しているか | ダマシ回避に有効 |
| RSIの期間設定を銘柄に合わせて調整しているか | 反応速度を最適化 |
| ダイバージェンス（逆行現象）を意識しているか | トレンド転換の前兆を掴む |
| RSI以外の根拠（移動平均・ニュースなど）を確認しているか | 多面的な判断で信頼性アップ |
まとめ：RSIは「冷静な投資判断」を助ける羅針盤
RSI（相対力指数）は、株価の過熱感を数値で見える化できる便利なツールです。
「買われすぎ」「売られすぎ」のサインを理解すれば、
感情的な売買を防ぎ、冷静な判断ができるようになります。
- RSIが高い＝上昇が行きすぎているサイン
- RSIが低い＝下落が行きすぎているサイン
- ダイバージェンスやトレンド確認を組み合わせると効果的
最初は「なんとなく眺めるだけ」でもOKです。
慣れてくると、相場の“呼吸”のようなリズムが自然に掴めるようになります。
RSIは、投資家が感情に流されず、データで相場を読む力を身につける第一歩です。
