投資を始めた会社員が戸惑う「年末調整と確定申告の違い」
近年、会社員でも株式や投資信託、NISAなどを活用して資産運用を始める人が増えています。
しかし、「年末調整で投資の利益も処理されるの?」「確定申告は不要なの?」と疑問を持つ人も多いでしょう。
給与所得者は、基本的に勤務先が税金の計算と精算を行うため、自分で確定申告をする機会は少ないです。
一方、投資による利益は“年末調整では扱われない”ケースがほとんどです。
この記事では、会社員が投資を行った際に年末調整で何が処理され、どんな場合に確定申告が必要になるのかを、わかりやすく解説します。
年末調整で処理される所得と処理されない所得の違い
まず最初に、年末調整で処理できる所得とできない所得を整理してみましょう。
| 区分 | 内容 | 年末調整で処理できるか |
|---|---|---|
| 給与所得 | 会社からの給料・賞与 | 〇(自動で処理) |
| 配当所得 | 株式や投資信託の配当金 | ×(原則対象外) |
| 譲渡所得 | 株式や投信の売却益 | ×(対象外) |
| 不動産所得 | 家賃収入など | ×(対象外) |
| 雑所得 | 副業・仮想通貨など | ×(対象外) |
つまり、年末調整で完結するのは「給与所得」だけ。
投資や副業などで得た利益は、自分で確定申告しなければ税務処理が完了しません。
株式や投資信託の利益は年末調整で申告不要な場合もある
ただし、全ての投資が申告対象というわけではありません。
実は、証券会社の「口座区分」によって申告が不要になるケースもあります。
1. 源泉徴収ありの特定口座なら申告不要
もっとも多いのが、「特定口座(源泉徴収あり)」を選択している場合です。
この口座では、取引のたびに証券会社が自動的に税金(20.315%)を計算・納付してくれます。
そのため、会社員であっても投資利益を確定申告しなくてOKです。
年末調整でも処理する必要はありません。
✅ポイント:
・売却益や配当金はすべて自動で課税
・確定申告の手間なし
・税金を払いすぎる心配も少ない
2. 源泉徴収なしの特定口座・一般口座は申告が必要
一方、「特定口座(源泉徴収なし)」または「一般口座」を利用している場合は、
自分で確定申告を行う必要があります。
この場合、証券会社から送られる「年間取引報告書」をもとに、
利益・損失を申告し、税金を支払う形になります。
特に一般口座は年間取引明細を自分で集計する必要があるため、初心者にはややハードルが高いです。
3. NISA口座は完全非課税で申告不要
「少額投資非課税制度(NISA)」で運用している場合、利益・配当ともに非課税となります。
そのため、確定申告や年末調整の対象にもなりません。
| 口座種類 | 税金の扱い | 確定申告 |
|---|---|---|
| 特定口座(源泉徴収あり) | 自動で課税 | 不要 |
| 特定口座(源泉徴収なし) | 自分で申告 | 必要 |
| 一般口座 | 自分で集計・申告 | 必要 |
| NISA口座 | 非課税 | 不要 |
配当金の扱いによって申告が必要になるケースもある
株式や投資信託を保有していると、配当金を受け取る機会もあります。
実はこの配当金の受け取り方によって、申告が必要になる場合があるのです。
配当金の受け取り方法の違い
| 受け取り方法 | 税金の扱い | 確定申告の必要性 |
|---|---|---|
| 証券口座で受け取る(源泉徴収あり) | 自動で税金が差し引かれる | 不要 |
| 登録配当金受領口座方式(銀行受取) | 一律20.315%源泉徴収 | 原則不要 |
| 配当金領収証方式(郵便受取) | 一律課税 | 原則不要 |
ここまでは、いずれも税金が自動で処理されるため、年末調整も確定申告も不要です。
ただし、配当控除を利用したい場合は、あえて申告したほうが得になるケースがあります。
配当控除を利用して節税する方法
配当控除とは、上場株式などの配当金に対して一定額を所得税・住民税から差し引く制度です。
申告分離課税または総合課税を選ぶことで適用できます。
特に所得が少ない人(年収400万円以下など)は、申告することで還付金が戻る可能性があります。
✅チェックポイント:
・配当控除は確定申告を行わないと適用されない
・給与所得と合算して課税されるため注意が必要
・住民税のみ申告する「住民税申告書」も利用可能
投資損失がある場合は確定申告で節税できる
年末調整では損失を扱うことはできませんが、確定申告を行うことで節税に活かせます。
特に「損益通算」や「損失の繰越控除」という制度は、投資家にとって重要です。
損益通算とは?
同一年内で利益と損失を相殺して課税所得を減らす制度です。
たとえば:
- A社株で+50万円の利益
- B社株で−40万円の損失
➡ 損益通算後の課税対象は+10万円のみになります。
その結果、税金(約2万円)が節約できるという仕組みです。
損失の繰越控除とは?
損益通算をしても損失が残った場合、翌年以降3年間まで繰り越せます。
| 年度 | 収支 | 課税対象 |
|---|---|---|
| 1年目 | −60万円 | 繰越 |
| 2年目 | +30万円 | −30万円(繰越) |
| 3年目 | +20万円 | 10万円課税 |
このように、損失をうまく活かすことで将来の税負担を抑えられます。
年末調整ではカバーできない「投資の税金」
ここで改めて確認しておきたいのが、年末調整では投資に関する税金を処理できないという点です。
会社員が勤務先を通じて受ける年末調整は、給与所得に関する税額調整のみ。
一方、投資利益は「申告分離課税」という別枠で課税されるため、
勤務先のシステムでは処理されません。
そのため、
- 複数口座を利用している
- NISA以外で取引している
- 損失を翌年に繰り越したい
といったケースでは、自分で確定申告を行う必要があります。
会社員が確定申告すべき5つのケース
投資利益がある会社員の中には、「自分は確定申告が必要なのか?」と悩む方も多いでしょう。
ここでは、年末調整では完結しないため、確定申告を行うべき代表的な5つのケースを紹介します。
1. 「特定口座(源泉徴収なし)」または「一般口座」を使っている場合
これらの口座では、証券会社が税金を自動的に納付してくれません。
そのため、利益が出た年は必ず確定申告をして納税する必要があります。
また、複数の証券口座を利用している場合も、それぞれの取引を合算して申告します。
税金の二重払いを防ぐためにも、年間取引報告書をきちんと確認しましょう。
2. 損失を翌年以降に繰り越したい場合
1年で損失が出た場合でも、「損失の繰越控除」を利用すれば翌年以降の利益と相殺できます。
これを適用するには毎年確定申告を継続することが必須です。
もし1年でも申告を怠ると、翌年以降に繰り越せなくなってしまうため注意が必要です。
💡ワンポイント
投資初心者でも、赤字の年に確定申告しておくことで「節税の種」を残せます。
翌年以降の利益が出たとき、税負担を大きく軽減できる可能性があります。
3. 配当控除を使って税金を取り戻したい場合
給与所得が少ない人や、扶養内で働く配偶者などは、配当控除の申告をすることで還付金を受け取れるケースがあります。
たとえば、年間配当金が10万円程度でも、所得水準によっては数千円〜1万円ほど税金が戻ることもあります。
源泉徴収されている場合でも、確定申告を行うことで節税が可能です。
4. NISAと課税口座を併用している場合
NISA口座の利益は非課税ですが、課税口座(特定・一般)での利益や損失は申告対象です。
たとえば、NISAで利益が出て、課税口座で損失が出た場合でも、損益通算はできません。
しかし、課税口座内での取引に関しては損益通算・繰越控除が使えるため、
NISAと併用している人も確定申告の確認が重要です。
5. 複数の収入源(副業など)がある場合
副業収入や不動産収入がある会社員は、投資利益と合わせて総合課税の対象となることがあります。
年間の副業所得が20万円を超えると確定申告が必要となるため、
投資の利益とあわせて整理しておくとスムーズです。
投資利益を確定申告する際の基本的な流れ
では、実際に会社員が投資利益を確定申告する場合、どのような手順で行えばよいのでしょうか。
ここでは、投資初心者にもわかりやすい5ステップで解説します。
ステップ1:年間取引報告書を準備する
証券会社は、1年間の売却益や配当金の情報をまとめた「年間取引報告書」を発行します。
これは確定申告の必須資料であり、オンライン証券ではマイページからPDFでダウンロード可能です。
ステップ2:確定申告書等作成コーナーで入力
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」(またはfreee・マネーフォワードなどの会計ソフト)を利用し、
次の項目を入力します。
- 株式等の譲渡所得等の金額
- 配当所得の金額
- 損益通算・繰越損失の金額
- 配当控除の有無
ステップ3:源泉徴収票を添付して提出
会社員は勤務先の源泉徴収票も必要です。
給与所得と投資所得を正しく区分し、税額を再計算します。
電子申告(e-Tax)を利用すれば、紙の書類提出は不要です。
ステップ4:還付または納税を確認
申告が完了すると、税額が再計算され、以下のいずれかになります。
| 状況 | 結果 |
|---|---|
| 税金を多く納めていた | 還付金が振り込まれる |
| 税金が不足していた | 追加納税(クレカ・口座振替) |
ステップ5:損失の繰越を忘れずに申請
損失が出ている年は、忘れずに「繰越控除」のチェックを入れましょう。
翌年以降に自動で引き継がれるため、節税効果を最大化できます。
投資の税金を最適化する3つのポイント
確定申告や年末調整を正しく理解すれば、投資の税金を大きく減らすことも可能です。
ここでは、初心者でも取り入れやすい3つの節税テクニックを紹介します。
① NISA・iDeCoなど非課税制度をフル活用する
- NISA:運用益・配当金が非課税
- iDeCo:掛金が全額所得控除
特にiDeCoは、給与所得から控除されるため、年末調整で節税効果が直に反映されます。
一方、NISAは確定申告不要のため、手間なく税金を抑えることが可能です。
② 配当控除・損益通算を上手に組み合わせる
「配当控除」で配当所得の税率を下げ、「損益通算」で利益と損失を相殺すれば、
所得税・住民税の両方で節税効果が得られます。
ただし、配当控除を適用する場合は総合課税を選択する必要があるため、
所得水準によっては逆に不利になる場合も。
申告書作成コーナーの自動計算機能を利用して、比較シミュレーションするのがおすすめです。
③ 複数口座の損益を一本化して管理する
複数の証券口座を持っている場合、それぞれの損益を合算して申告しなければなりません。
特定口座を活用すれば取引記録が一元管理され、税務処理も簡単になります。
freeeやマネーフォワードなどのクラウド会計ソフトを活用すると、
証券口座と自動連携して損益データを集約でき、申告の手間が大幅に減ります。
会社員が「確定申告しないと損する」パターンとは?
一見、源泉徴収あり口座を使っていれば安心と思われがちですが、
実は「申告した方が得」になるパターンも存在します。
ケース1:複数の証券会社を利用している場合
A証券では利益、B証券では損失が出ていると、源泉徴収が相殺されず払いすぎてしまうことがあります。
確定申告で損益通算すれば、払いすぎた税金を取り戻せます。
ケース2:所得が少ない年
転職・産休・時短勤務などで年収が下がった年は、
総合課税を選択して配当控除を適用することで、税金を取り戻せる可能性があります。
ケース3:ふるさと納税を併用している場合
ふるさと納税を確定申告で行う場合、投資所得も含めて再計算されます。
投資の申告を省略すると、控除額が正しく反映されないことがあるため注意が必要です。
確定申告でミスしないためのチェックリスト
| チェック項目 | 内容 |
|---|---|
| ✅ 年間取引報告書を入手したか | 各証券会社からPDFをダウンロード |
| ✅ 配当金の課税区分を確認したか | 総合課税・申告分離課税の違い |
| ✅ 損益通算の対象を整理したか | 同一課税区分のみ通算可能 |
| ✅ iDeCo・NISA口座は除外したか | 非課税口座は申告不要 |
| ✅ e-Taxの利用環境を整えたか | マイナンバーカード・ICカードリーダーを準備 |
まとめ:年末調整に頼りすぎず、自分の投資税務を把握しよう
会社員の年末調整は、あくまで給与所得の税金を調整する仕組みであり、
株式や投資信託などの投資利益まではカバーしません。
しかし、確定申告を正しく行えば、
- 税金を払いすぎていた分を還付できる
- 損失を繰り越して将来の節税につなげられる
- 配当控除などで所得税を軽減できる
といったメリットを得られます。
特定口座やNISAをうまく使い分けながら、
「確定申告をするか・しないか」を自分で判断できるようになれば、
投資によるリターンを最大化する“税金リテラシー”が身につくでしょう。

